学術研修とは
平成22年度から、広島県鍼灸マッサージ師会は、生涯学習認定制度を実施しています。
広島県鍼灸マッサージ師会会員で年間で25単位以上を認定されると東洋療法研修試験財団から生涯研修修了証が交付されます。
学術研修会は、一つの分野に固着せず、幅広く多角的に活用しやすい内容で開催しています。
学術研修会報告
令和2年度 学術研修会等報告
第1回 学術研修会報告
学術副部長 尾野 龍一
令和2年11月22日(日)、IGL医療福祉専門学校にて第1回学術研修会を開催しました。参加者数は15名でした。
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、7月と9月の研修会が延期となり、今年度初めての学術研修会となりました。今回は、中医師、鍼灸師などの資格をお持ちで広島あらき鍼灸整骨院に勤務されている李曉燕先生をお迎えして第一部「 中医学とは 」第二部「 薬膳(医食同源) 」のテーマで講演して頂きました。
第一部の講演では、現在世界中で流行している新型コロナウイルス感染症に対する中医学の治療についての話がありました。中国武漢において西医師が5万人、中医師が5千人派遣され治療が行われたそうです。コロナ感染者320人を西医と中医に分けて治療を行った比較では、西医での死亡者113名、治療期間平均30日、治療費40万元に対し中医での死亡者は0名、治療期間平均7日、医療費何百元ということで、中医では後遺症がなかったとのことでした。日本で新型コロナウイルスの感染症の治療を行うのは難しいですが、治療効果がでており大変驚きました。
李先生が行っている新型コロナウイルス感染症の疑い例に対する処方の紹介がされました。正気および肺と脾の機能を刺激することを目的に風門、肺兪、脾兪、合谷、曲池、尺沢、魚際、気海、足三里、三陰交などの経穴を用い、様々な症状、舌診、脈診の所見から選穴されていました。登録販売者の資格もお持ちなので、患者さんに勧めている漢方薬やお茶の処方の紹介もありました。
その後、中医診断学における四診(望診、聞診、問診、切診)、特に舌診について話がありました。新型コロナウイルス感染症の疑いの患者さんを診る際、患者さんに触れることがないので診察しやすいとのことでした。そしてインフルエンザに麻黄湯は抗ウイルス薬と同等の効果があるが、実証タイプで風寒型の風邪・インフルエンザのごく初期に飲むと効果が高いことを話されていました。ただし、副作用として血圧上昇、頻脈、動悸が出る場合があるので、高齢者や高血圧、心臓病などの持病がある方には注意が必要とのことでした。
第二部の講演では、身体を温めたり冷やしたりする作用がある五性(寒・涼・温・熱・平)と、五臓六腑を養う作用がある五味(酸・苦・甘・辛・鹹)についての話がありました。冬は腎をしっかり補うことが必要で、牡蛎やイカ、昆布など腎を補う鹹味の食材や、肉類やかぼちゃ、エビなど温熱性の食材を推奨されていました。その他、紹介されたものを食材表にまとめておきますので参考にしてください。
寒・・・すいか、にがうり
涼・・・きゅうり、セロリ
温・・・生姜、栗、紫蘇
熱・・・胡椒、唐辛子
平・・・豆類、キャベツ、白菜
酸・・・アンズ、ザクロ酢
苦・・・ニガウリ。チシャ、茶葉
甘・・・穀物、果物、ハチミツ、砂糖、枸杞子
辛・・・生姜、ネギ、ニンニク、胡椒、唐辛子
鹹・・・昆布、ノリ、海藻、塩、エビ
無・・・ハトムギ、冬瓜、白菜
他にもいくつか紹介します。生姜と乾姜の違いは加熱の有無で、熱を加えることでジンゲロールからショウガオールに変化し効能が変わります。生姜の主な効果は、吐き気や食欲不振を改善する健胃作用、解熱や発表効果が期待できます。乾姜は身体を中から温める作用が強く、胃腸の冷えている下痢や便秘、腹痛の際に効果を発揮します。鎮咳作用もあります。一般に冷え性の人には生姜が良いといいますが、乾姜のほうが効果が高いようです。
陳皮はみかんの皮を乾燥させたものです。働きは理気健脾で胃、腹の張り、吐き気、嘔吐、燥湿化痰で胸がつかえ苦しい、咳、痰が多い、喘息の症状に効果があります。みかんの皮は捨てずにしっかりと乾燥させ、そのような症状の時にお茶などと一緒に混ぜて飲むと良いそうです。
冬は温性のプーアル茶や紅茶がおすすめです。脂肪分解作用も強いのでダイエット効果もあります。1年中麦茶を飲んでいる方がいらっしゃいますが、麦茶は冷やす作用があるので、夏だけにしたほうが良いそうです。
このように広島県鍼灸マッサージ師会では会員の皆さまに役に立つ学術研修会を開催しています。まだ参加したことがない方、是非お気軽にご参加ください。平成22年度から広島県鍼灸マッサージ師会は、生涯学習認定制度を実施しています。会員の方は年間25単位以上認定されると、東洋療法研修試験財団から生涯研修修了証が交付されます。
第2回 学術研修会報告
学術副部長 尾野 龍一
令和2年12月6日(日)、西区民文化センターにて第2回学術研修会を開催しました。
参加者数は18名でした。
今回は、はる鍼灸治療院院長の田邊美晴先生をお迎えして「 不妊治療の基礎から臨床まで 」のテーマで講演して頂きました。田邊先生はJISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関)学術部委員をされており、不妊鍼灸、婦人科、産科(月経不順など)、難聴、
めまい、耳鳴、過敏性腸症候群、脱毛症、自律神経失調症、整形外科(腰痛)などの治療をされており、不妊治療では卵質改善、着床障害の抑制、良好な卵胞形成促進、ホルモン分泌の調節などを行っておられます。
講演の内容を簡単に紹介します。不妊症とは妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交しているにもかかわらず、
一定期間(1年間)妊娠しないものをいいます。最近は晩婚化、晩産化、やせの女性の増加、
草食系男子の増加などにより子供を授かれないカップルが増加しているそうです。
新型コロナウイルス感染症の影響で来年度の出生数が大幅に減少するとの報道があったそうです。
これは新型コロナウイルス感染症を懸念して妊活、人工受精の自粛が影響しているとのことでした。
治療するために妊娠の仕組みを理解する必要があるため、月経周期におけるホルモンの変化を中心にお話しされました。
(FSH、LH、エストロゲンやプロゲステロンなどです。ここでは省略しますが基礎となるとても大事なところです。)
そして、卵子はいつ、どのように形成されるのか、
卵胞の発育、排卵、受精、着床、妊娠の成立、妊娠の維持、胎盤、流産、不妊因子の話がされました。
病院での検査、治療についても詳しく話していただきました。検査は血液検査、卵管造影検査、精液検査、
ヒューナー検査(膣の中に精子がどれくらいいるかを調べる)などがあります。治療は基礎体温や排卵検査薬により、
排卵日に合わせて性交を促す指導をするタイミング療法、排卵日に合わせて調整した精液を子宮内に注入する配偶者間人工授精、
採卵により回収した卵子と精子を一緒にし、体外で受精させ育て、胚移植により子宮へ戻す体外受精があります。
PRP療法など最新の治療法の紹介もありました。
不妊症の原因の半分は男性ですので、男性不妊症の話がありました。
精子に良いこと18か条(リプロダクションクリニック 松林Drブログより)を紹介します。
禁煙、ブリーフよりもトランクス、飲酒は適量に、長風呂・長サウナは控える、自転車・バイクに乗りすぎない、
放射線に要注意、育毛剤を飲まない、規則正しい生活、膝上でノートPCを使わない、禁欲しすぎない、運転しすぎない、
携帯電話は精巣から離す、昔ながらの食生活、太りすぎない、アンチエイジングを考慮、有機化合物に注意、
環境ホルモンに注意、心理ストレスの軽減、これらのことは統計的に有意差がでているそうです。
田邊先生が行っている鍼灸治療は育卵と着床とで治療の仕方を変えておられました。
スーパーライザーを用いた星状神経節への照射や下肢への低周波鍼通電、
電子温灸器などを用いての治療を具体的に治療中の写真を交えて説明がありました。
そして最後に質疑応答があり研修会を終えました。
このように広島県鍼灸マッサージ師会では会員の皆さまに役に立つ学術研修会を開催しています。
まだ参加したことがない方、是非お気軽にご参加ください。
平成22年度から広島県鍼灸マッサージ師会は、生涯学習認定制度を実施しています。
会員の方は年間25単位以上認定されると、東洋療法研修試験財団から生涯研修修了証が交付されます。